都道府県格付研究所

統計コラム:統計の視点-秋田県が自殺率日本一は本当か?

このコラムは、該当年におけるランキングの結果をもとに記述しています。皆さんが統計に親しむ一助になれば幸いです。なお、当研究所独自の推論や憶測を含む場合があります。また、内容が最新のランキング結果とは必ずしも一致しない場合があります。

こんにちは、当研究所の研究員・都道府ケンシロウです。

ランキング地図先日、某メディアの記事で「日本では現在、年間3万人近くの自殺者が報告されており、その中でも秋田県は2010年、15年連続で自殺率日本一を記録」という一文がありました。

この“自殺率”という言葉から、病気でも事故でもなく、自殺という悲しい選択をして一生を終える人が秋田県には多いのかな、という印象をもった人がいるとすれば、それは間違いかもしれません。この“自殺率日本一”が示しているのは、単に「秋田県は中高年の人口割合が多い」という事実かもしれないと気付いている人はどのくらいいるのでしょうか。

そもそも、“自殺率”という言葉のあいまいさが問題なのだと思いますが、“一生を終えた人のうち、自殺という形で命を落とした人の割合が最も多い都道府県”は、秋田県ではありません

単純に自殺者数が最も多い都道府県は、人口がもっとも多い東京都です(自殺者数ランキング)。

次に、おそらく前出の記事での“自殺率”とは、人口の影響を避けるため、各都道府県の自殺者数を、その都道府県の人口で割って計算したものと推測されます。この計算方法の結果を自殺率とするならば、確かに秋田県が日本一になります(人口10万人あたりの自殺者数ランキング)。

しかし、日本人全体の自殺の特徴として、年齢別でいえば中高年が最も自殺しやすい、という調査結果が出ています(厚労省の統計調査)。

そして、日本でもっとも中高年の割合が多い地域は、秋田県なのです(平均年齢ランキング65才以上割合ランキング)。

つまり、「人口が多い地域では自殺者が多い」(=東京都が一番)のと同様に、単純に「中高年が多い地域では自殺者が多い」(=秋田県が一番)ということであり、秋田県は一生を終える人のうち自殺者の割合が日本一多い地域とは言えないことがわかります。

ランキング地図当研究所では別の視点からの自殺率として、病気や不慮の事故などすべての死因を含む死亡者総数のうち、自殺を主な死亡事由とする割合、すなわち“死亡者総数に占める自殺者数”を公開します(死亡者1千人あたりの自殺者数ランキング)。

この自殺率によると、“一生を終える人のうち自殺者の割合が多い都道府県”は、沖縄県ということになります。

沖縄県は住民の平均年齢がもっとも低いため、自然死の割合が相対的に少なくなっていると思われます。また、秋田県はこのランキングでも比較的上位(4位)にランクインしているため、日本一ではないにしても、高齢化対策以外に自殺対策が必要な地域であると考えられます。

このコーナー「統計コラム」では、統計から導かれる日本や都道府県の意外な姿を紹介していきたいと思います。

死亡者1千人あたりの自殺者数ランキング トップ5
1沖縄県35.47 100%100% 379 10,686 87.1E
2東京都27.61 78%78% 2,919 105,723 66.1D
3埼玉県27.50 78%78% 1,586 57,670 65.8D
4千葉県26.50 75%75% 1,370 51,689 63.1D
5神奈川県26.39 74%74% 1,872 70,946 62.8D
死亡者1千人あたりの自殺者数ランキング地図
人口10万人あたりの自殺者数ランキング地図
人口10万人あたりの自殺者数ランキング トップ5
1秋田県31.86 100%100% 346 1,085,997 81.9E
2岩手県27.82 87%87% 370 1,330,147 67.4D
3宮崎県27.48 86%86% 312 1,135,233 66.2D
4新潟県27.42 86%86% 651 2,374,450 66.0D
5沖縄県27.21 85%85% 379 1,392,818 65.2D
自殺者数ランキング トップ5
1東京都2,919 100%100% 90.1-
2大阪府1,954 67%67% 73.3-
3神奈川県1,872 64%64% 71.9-
4埼玉県1,586 54%54% 66.9-
5愛知県1,481 51%51% 65.1-

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